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医学書LIBRARY

お勧めの医学書を科目ごと、診療科ごとにご紹介します。 医学生はもちろんのこと、ドクターや一般の方にも参考になればと思います。質問もお待ちしていますのでお気軽にコメントください。

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『ネッターコンパクト解剖学アトラス 上巻・下巻』(南江堂)

『ネッターコンパクト解剖アトラス 上巻・下巻』(相磯貞和 訳 南江堂)は、 いわゆるアトラスのネッターのコンパクト版です。上巻・下巻の2冊セットで、持ち運びができるB6の大きさです。この本は、各見開きの左ページに図(アトラスの縮小版のようなオールカラーのもの)が、右ページに図にふった番号の部分の名称(筋肉の場合、支配神経や起始・停止や作用なども)やちょっとした説明が書いてあります。左ページだけを見て、名称などを思い出し、右ページをみて確認すれば、テスト対策になります。おそらくアメリカの学生のテスト対策用と思われる内容です。

この本のいいところは、この本を通して復習すれば、解剖学に必要な大まかな知識が身につくところです。臨床的な事項などの細かいところはカバーできませんが、暗記が必要な部位の名称はこの一冊で十分です。いちいち大きくて重いアトラスを開かなくとも、各部位の血管や神経の分布まで載っているので、口頭試問対策にも力を発揮します(ちなみに、私が解剖をしたときのクラスではほとんどの人がこれを購入していました)。ネッターの絵は見やすく、個人差による好みもあまり分かれないように思います。なお、用語は英語と日本語で書いてあります。

おすすめ度:★★★★★


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『骨単』(NTS)

『骨単』(河合良訓 監修、広島広至 本文・イラスト NTS)は『肉単』の骨バージョンです。骨学の勉強に使えます。

構成は、骨の絵と名称、各部位の名称です。肉単よりも、説明は少ないですが、骨の部位については、かなり細かいものまで載っているので、実習用にも、辞書としても使えます。骨学については、それ単独のアトラスやコンパクトな本などが少ないので、これは一冊持っておくと何かと便利です。骨学はスケッチをすることも多いと思いますが、分厚い本をいちいち開かずに手軽に骨の形状・部位がわかるので、便利です。『骨学実習の手びき』(こちらは、観察の手順やポイントが書かれています)と合わせると、骨学の実習には大いに役立つはずです。

おすすめ度:★★★★☆

 

『肉単』(NTS)

『肉単』(河合良訓 監修  原島広至 本文・イラスト NTS)は、筋肉を勉強するための参考書です。いわゆる教科書として使うような格式高い本ではないので(いわゆるちょっとチャラい本)、大学の先生によってはあんまりおすすめしない方もいらっしゃいますが、実際に使ってみると、案外得るものは大きいです。ですから、参考書のひとつ、試験対策の本として持つのをおすすめします。

この本は、筋肉を覚えるために作られています。筋肉の図と、その名前(和名、英名)が記されているところまではなんの変哲もない単語帳(この本をすすめない先生は単なる単語帳だと思われているようです)ですが、他の本と大きく違うところは、各筋の作用がわかりやすく噛み砕いて書かれてあるところです。物を持ち上げるときに使う筋だとか、平泳ぎをするときに使うだとか、自分の体験に即して理解を深めることができます

確かに、教科書的な分厚い本にもこのような筋の作用が書いてあるにはあるのですが、『肉単』のように見やすくまとまって書かれていることは少ないです。本来ならば、試験前に、分厚い教科書から抜き出して自分で整理することも大事なのですが、筋肉は暗記量も多いし、その整理(いわゆるシケプリ作り)を『肉単』が代わりにやってくれたと考えればよいです。巻末には、筋肉の起始・停止、支配神経、作用がまとまった表もついていて何かと便利です。

筋肉を勉強する際に大事なのは、まずは起始・停止を覚えることです。実際、ひとつひとつの筋がどのような作用をしているかというのは、厳密にわかるのではないので、この「ついているところ」から動きを考えるのが普通です。とりあえず起始・停止を覚えておけば、その筋肉がどのような動きに貢献しているか、だいたい予想をすることができます(たとえば、大腿直筋は下前腸骨棘を起始として、膝蓋骨と膝蓋靭帯を通って脛骨粗面に付く(停止)ことから「この筋は2関節筋で膝関節の進展のみならず、股関節の屈曲にも関係してそうだな」とあたりをつけられる)。また、支配神経を覚えることで、どの神経に障害があるとどの筋の麻痺が起こるかというのがわかります

解剖学では、覚えることがたくさんありますが、ただ意味もなく丸暗記するのではつまらないし、すぐに忘れてしまうので、使える知識になりません。しかし多くの人が丸暗記をしようとして、あまりの量の多さに挫折しているようです。ここで重要なのは、暗記を理解とどう結びつけるかということです。やはりある程度は自分なりに理解して、あとになって多少忘れてしまっても、だいたいの感覚(重要なポイントなど、解剖学の基本的な考え方)をもって対応できる力を養うことが必要だと思います。そのためには、覚える事項を自分の体験やほかの項目との関係などと関連付け、いろんな角度から捉えることが大事なのです。

おすすめ度:★★★★☆

『骨学実習の手びき』(南山堂)

この『骨学実習の手びき』(寺田春水 藤田恒夫著 南山堂)は『解剖実習の手びき』の骨学版です。
解剖学にくらべ、とても薄い本ですが、骨学実習のポイントが詳細に書かれています

骨学実習は、詳しい実習書を指定しない大学もあるので、ともすればただ漫然と骨をスケッチするだけに終わってしまいがちですが、この本をテキストとして実習をすれば、骨学実習でどこに気をつけて観察すればよいのか、よくわかります。関節などについては、解剖実習では筋肉などをすべて取り外すわけではないので骨学の段階できちんと見ておく必要があります。自分で骨と骨を組み合わせて、関節の動きをシュミレーションしてみると、面白いです。ここでしっかり見ていると、解剖実習に進んだ際にも役立ちます。

この本は和名のほかに、英語とラテン語も記されています。骨学で問われる重要事項もちりばめられているので、骨学の試験の勉強にも使えます。

おすすめ度:★★★★☆

解剖学の勉強法

こんにちは、このブログでは随時、医学の勉強法や学生・社会人に必要なスキルアップの方法をご紹介しようと思います。

さて、今回も前回に引き続き、解剖学についてお話します。
解剖学は、その名の通り、解剖を通して、人体の仕組みを理解する学問です。大抵の大学では、骨学を学んでから実習に入ると思います。骨学とは、骨の形や部位の名称を覚えたり、各骨の結合がどうなっているか(関節)理解したりする学問です。ここできちんと骨の部位を覚えるのは、実際の解剖に進んだ時に大いに役立ちます。というのも、筋肉の大部分は骨に付き(起始)、骨に終わる(停止)ので、骨の部位を正しく把握していないと、筋肉の同定や動きを理解できないからです。

骨学が終わると、いよいよ実際のご遺体を使っての解剖に入ります。解剖実習では、予習が不可欠です。しかし、予習をどうやればよいかいまいちわからない方も多いことでしょう。予習は、頭の中で実習内容を大まかにシュミレーションできるようになることを目指せばとりあえず、実習はスムーズに進めることができます。大学によっては、時間に対して進度が追いつかないようなところもあると思いますが、きちんと予習しておけば、他の班の2倍以上のスピードで実習を進めることも可能といっても過言ではありません。それほど予習は大事なのです。

具体的に言うと、まず『解剖実習の手びき』などの実習書とアトラスを用意します。実習書には部分的な図しか載っていないことが多いので、アトラスは必ず用意してください。実習書の手順を読みながら、対応するアトラスの図を参照してください。そうすると、どのような順でどういう風に作業をすればよいのかがわかります。ここで使うアトラスは、すべて写真付きの『解剖学カラーアトラス』がおすすめです。慣れないうちは、いくら図で理解していても、実際に実習で見ると、どれが該当するものかわからないことが案外多いです。その点、写真で理解しておけば、だいたい見たいものがどのような色・形状・質感なのかわかるので、予習には大いに役立ちます。また、口頭試問の前に実習室に入れない場合も、写真のアトラスなら、実物に近いもので暗記できるので、便利です。

解剖は復習も大切です。覚えることが膨大なので、試験前に徹夜で勉強しようというのは得策ではありません。できたら予習の段階で教科書もすべて読んでおくのが理想的ですが、復習では『解剖学講義』などの教科書を一通り読むのがいいと思います。実習と知識がうまく、結びついて、忘れにくくなります。

教科書は理解を深めるのには便利ですが、試験直前にはやはり暗記に特化した勉強もしたいと思います。ここで便利なのが『ザ・マッスル』という筋肉のカードです。各カードの表には、筋肉の図(骨のどこに付いているかもわかる)が、裏には筋肉の起始・停止や働き、支配神経などが載っています。筋肉や神経の暗記はこのカードを使って何度も繰り返し覚えるのが良いです。最終的には、筋肉の名前を聞いただけで、筋肉がどこからどこについているのか、頭の中で図をイメージできることを目指してみてください。また、部位のチェックは、『ネッターコンパクト解剖学アトラス』がとても便利です。これで、主な部位の名称をチェックできます。神経や血管がどのように分布しているかも把握することが可能です。

勉強が堅苦しいと感じたら『イラスト解剖学』などのちょっとやさしめの参考書を読んでみるのをおススメします。いろんな文献を読んでみると、今までわからなかったことが頭の中で繋がることがしばしばあります。

『イラスト解剖学 第6版』(中外医学社)

医学生に人気の解剖学の参考書です。

『イラスト解剖学 第6版』(松村讓兒 著 中外医学社)は題名の通り、内容は各ページに一項目ずつテーマが絞られていて、それに対するイラスト付きの解説が施されています。試験対策用に学生が作るいわゆる’シケプリ’の進化版といってもよいし、そういう意味で画期的です。

解剖の勉強がなかなか手に付かない人にとっては、読み物としてはとても面白いし、勉強のきっかけになると思います。しかし、あまり体系的な編集がなされていないので、その結果、網羅的ではありません(結果的に試験で訊かれることは書いてあるにはある)。あくまで興味がある個所や特定のテーマについて調べるという目的や、読み物として楽しむのがよいと思います。それから、他人のノートで勉強しずらいのと同様で、人によっては、この本のイラストの描き方やまとめ方に、うまくなじめないかと思います。そういう意味では、教科書としては、すでにご紹介した
『解剖学講義』のほうがはるかにきちんとしていておすすめなのですが、持っていて損はない本ではあります。

おすすめ度:★★★☆☆

『解剖実習の手びき』(南山堂)

これは解剖の実習用テキストです。

大抵の大学では、実習用のテキストは指定されている場合が多いと思いますが、多くの大学でこの『解剖実習の手びき』(寺田春水・藤田恒夫 著 南山堂)を用いているようです。もし指定されていなければ、これを使うのがいいです。

この手びきを使うと、一つ一つの作業手順が細かく示されており、どういう風にそれぞれの筋肉や神経などを同定するかもわかります。この手びきに忠実にやれば、かなり細かい部分まで解剖を行うことができます。実習時間に余裕がない場合に、省いてよい箇所も示されていて(ここは時間に余裕がある場合に行う、などと示されている)、親切丁寧なテキストです。

実習用に用いるのには最適ですが、図はあくまで説明の模式図程度なので、やはり、予習のためにもこの本のほかに、解剖用アトラス(図譜)もそろえる必要があります。予習の際に、アトラスを眺めながら作業手順を確認しておくと、実際の作業効率が全く違います。解剖で進度に悩んでいる班は、たいてい予習に問題があると思われるので、予習を見直してみると、作業効率も理解度も上がります。

この本は、本文に和名とラテン語、英語が記載されているので、とても便利です。

おすすめ度:★★★★★

『解剖学講義 改訂2版』(南山堂)

今回は、解剖学の教科書として使える『解剖学講義 改訂2版』(伊藤隆 著 高橋廣子改訂 南山堂)をご紹介します。

この本は、多くの国公立大医学部でも推奨されている優秀な一冊。

解剖学総論に始まり、上肢・下肢・背部・胸部・腹部・・・と部位別に目次が構成され、それぞれの部位に対して骨格、関節、筋、脈管、神経の詳しい説明があります。形態学的所見のみにとどまらず、臨床的な説明も豊富で、こういう仕組みのところを損傷するとこういう理由でこういう症状が出る、といったわかりやすい解説がたくさん載っています。

最後には、中枢神経系(脳、脊髄、伝導路)について100ページ以上の記述があり、これは別に神経解剖のテキストを買わなくてもいいくらいきちんとした内容です。

巻末の付表には、筋の起止・停止・支配神経、和文と欧文の索引がついているので、辞書的にも大いに活用できます。索引には日本語・英語だけでなくラテン語表記も載っているので、とても便利です(ただしラテン語は日本語、英語に対する訳として載っているので、アルファベット順にはならんでいません)。


この本の良いところは、体系的に、しかも臨床学も含んだ広い視野で解剖学が勉強できるところにあります。黒い表紙に覆われていて、一見難しく見える分厚い本ですが、読んでみると、文や図の構成も見やすく、内容もとてもわかりやすく書かれています。発生学的な記述もあり、解剖学を実習だけでなく、体の機能や仕組みも通して学びたいという人にはとてもおすすめです。これを一通り読めば、試験で何を訊かれても怖くありません。

おすすめ度:★★★★★(満点)